1. 「日本から売っている」だけでは免責にならない
越境ECで中国向け販売を行う際、多くの日本企業が抱く誤解が「中国国内に法人・拠点がないから中国の規制は関係ない」というものです。しかし、これは正確ではありません。
中国の広告法(2015年施行・2021年改正)・電子商取引法(2019年)・食品安全法・化粧品監督管理条例(2021年)は、中国のプラットフォームを通じて中国の消費者に向けて販売される商品・サービスの広告表現を規制対象としています。Tmall Global・JD Worldwide(JD Worldwide)・小紅書REDなどのプラットフォームが中国国内に拠点を持つ以上、プラットフォーム上の商品ページ・広告・KOL投。
2. 規制が適用される「場所」と「表現の種類」
越境ECにおける広告表現規制は、出稿・掲載される場所と表現の種類によって適用法令が変わります。以下の3つの区分で整理します。
3. 商品ページのリスクレベル——カテゴリ別の危険度(グラフ)
商品カテゴリによって、広告表現で問われるリスクの高さと監督当局による取締り強度が異なります。規制の厳しいカテゴリほど、事前の法規チェックが不可欠です。
4. 越境ECの商品ページでよく見る「NG表現」の実例
日本語サイトの表現をそのまま中国語に翻訳した結果、中国の法令・プラットフォーム審査に引っかかるケースが頻発しています。以下は典型的なNGパターンです。
| 表現カテゴリ | NGの表現例(中国語訳) | 違反法令・理由 | 安全な代替 |
|---|---|---|---|
| 最上級・比較 | 「日本でNo.1売上」「他社比2倍の効果」 | 広告法28条・最上級規制 | 「累計販売○万個」(根拠数値で代替) |
| 効能・治療効果 | 「肌荒れを治す」「免疫力を高める」 | 食品安全法・保健食品法 | 「肌の健康維持をサポート」(成分事実のみ) |
| 医師・権威推薦 | 「皮膚科医推薦」「○○大学研究機関採用」 | 広告法・証明書類の提出義務 | 推薦者の書面同意書+証拠書類が必要 |
5. KOL投稿・ライブ配信への規制——事業者責任の範囲
「投稿したのはKOLであり、弊社ではない」——この論理は中国法では通じません。電子商取引法・広告法では、KOL投稿を依頼した事業者(ブランド側)も広告主として連帯責任を負います。
- KOCが投稿した内容に虚偽表現がある場合:事業者も虚偽広告の責任を問われる可能性がある
- PR表記がない「ステマ投稿」:2023年施行のインターネット広告管理弁法で明示的に禁止。事業者側に罰則
- ライブ配信中の発言:出演者(MCや商品紹介者)が述べた効能・比較表現も「広告」として扱われる
- インフルエンサーへの商品提供(ギフティング):対価なし提供でも宣伝目的が認定されれば広告規制が適用される
6. プラットフォーム審査で「弾かれない」ための設計
Tmall Global・JD Worldwide・小紅書REDは、それぞれ独自の広告審査基準を設けています。審査で弾かれると出品停止・商品削除・アカウント警告につながり、売上機会の損失だけでなく累積違反でアカウント永久停止になるリスクもあります。
| プラットフォーム | 審査の厳しさ | 特に問われる表現 | 対策 |
|---|---|---|---|
| Tmall Global | 非常に厳格 | 最上級表現・効能表現・証明書なしの受賞バッジ | 出品前に自主チェック。証明書類をシステムに登録 |
| JD Worldwide | 厳格 | 品質認証・比較表現・健康効能 | 中国認証機関による試験報告書の準備が必要 |
7. 越境EC広告の責任範囲を確認する
越境ECで販売する商品も広告規制の確認対象です。販売可能性と、表示できる効能・比較・保証は別の論点として審査します。
- 商品区分と越境ECでの販売条件を確認し、一般貿易との違いを混同しない。
- 商品ページ、バナー、動画、ライブ、KOL投稿の訴求を一つの一覧にする。
- 効能、比較、最上級、正規品保証、販売実績の根拠を表示単位で確認する。
- プラットフォーム独自審査と法令確認を分け、差がある場合は厳しい条件へ合わせる。
- ブランド、TP会社、代理店の承認・停止・修正責任を契約と運用表に残す。
8. 法律とプラットフォーム審査を分けて考える
さらに、プラットフォーム自身が独自の広告審査基準を設けており、中国の法律に準拠したチェックを出品者に対して行っています。「法律は知らなかった」という理由で審査を通過することはできません。