1.市場規模と成長率の推移

中国税関総署のデータによると、2024年の中国越境EC輸出入の取扱総額は約2兆8,000億元(約58兆円)に達し、前年比で約14%増加した。このうち輸入越境EC(海外から中国への販売)は約7,200億元で、全体の約26%を占める。

2.8兆元 2024年
越境EC総取扱額
前年比 +14.2%
7,200億 輸入越境EC
市場規模(元)
前年比 +11.8%
5.3億人 越境EC
利用者数(推計)
前年比 +8.4%
図1|中国輸入越境EC市場規模の推移(2020〜2024年)
出典:中国税関総署・艾瑞咨询(iResearch)
※2024年は速報値

成長率は2021年の急拡大(+18.6%)をピークに鈍化傾向にあるものの、絶対値は一貫して拡大しており、2027年には輸入越境ECだけで1兆元を超えると予測されている。コロナ禍で加速したEC利用習慣の定着と、中間層の「品質消費」志向が成長を下支えしている。

2.カテゴリ別シェアと日本製品の位置づけ

輸入越境ECでは、化粧品・スキンケア、食品・サプリメント、母子用品の3カテゴリが全体の約55%を占める。日本製品はこれら上位カテゴリで強い競争力を維持しており、特に「安全性・品質」の認知が高い。

図2|輸入越境ECカテゴリ別シェア(2024年)
出典:艾瑞咨询(iResearch)2024年12月
カテゴリ シェア 前年比 日本ブランド存在感
化粧品・スキンケア 24.3% ▲ +2.1pt ◎ 非常に強い
食品・サプリメント 18.7% ▲ +1.4pt ○ 強い
母子用品 12.1% ▼ −0.8pt ○ 強い
衣料・ファッション 11.4% ▲ +0.3pt △ 中程度
家電・デジタル 9.8% ▼ −1.2pt △ 中程度

3.プラットフォームの勢力図変化

天猫国際(Tmall Global)と京東国際(JD Worldwide)の2強体制は続いているが、2024年は抖音(TikTok)電商の越境EC参入本格化と、拼多多系の「Temu」による低価格攻勢が市場構造を大きく揺さぶった。

図3|輸入越境ECプラットフォーム別GMVシェア(2024年推計)
出典:各社公開情報・業界推計をもとに編集部作成
実務ポイント
天猫国際は依然として日本ブランドの主要参入経路だが、出店審査の厳格化・保証金引き上げ・手数料改定が相次いでおり、小規模ブランドには参入ハードルが上がっている。抖音電商(ライブコマース型)は中間コスト削減のチャンスがある一方、コンテンツ運用リソースの確保が不可欠だ。

4.規制環境の最新変化(2024〜2025年)

越境ECに関わる規制は2024年も複数の改正が行われた。特に重要なのは以下の3点だ。

① 個人輸入限度額の据え置きと監視強化

個人輸入の免税枠(1回5,000元・年間26,000元)は2025年も据え置きとなったが、海関(税関)の実態調査・サンプリング検査が強化されており、少額申告による脱税リスクが高まっている。

② 保税倉庫モデルへの優遇継続

杭州・上海・広州など主要自貿区(自由貿易区)の保税倉庫を活用した「備貨モデル」への優遇税制は2025年末まで延長が決定。在庫リスクを取れる企業にとっては依然として有利な選択肢だ。

③ 食品・化粧品の品質証明要件強化

2024年後半より、食品・化粧品カテゴリでの成分表示・原産地証明・第三者検査レポートの提出が実質的に義務化。日本国内の製造情報の中国語対応が急務となっている。

5.日本企業が2025年に取るべき具体的戦略

以上の市場動向と規制変化を踏まえ、日系企業が2025年に優先すべき戦略を3つに整理する。

① プラットフォーム依存リスクの分散

天猫国際1本に依存する体制は、手数料改定・アルゴリズム変更・審査基準変更のたびに事業基盤が揺らぐ。抖音電商(TikTok Shop中国版)・小紅書(RED)との組み合わせを検討すべき段階にきている。各プラットフォームのユーザー層と購買動線は異なるため、ブランド特性に応じた使い分けが重要だ。

② コンテンツマーケティングへのシフト

中国消費者の情報収集経路は検索からSNS・ライブコマースへ急速に移行している。KOL(キーオピニオンリーダー)やKOC(キーオピニオンコンシューマー)を活用した「種草(シード・マーケティング)」は、今や越境ECの標準施策となった。予算規模を問わず、コンテンツ制作への投資を優先すべきである。

③ 品質・信頼性の可視化

中国消費者の「日本製品」への信頼は依然として高いが、それだけでは差別化できない時代になっている。成分開示・製造工程の透明化・第三者認証の取得など、品質の可視化が購買決定に直結する。規制対応と同時に、ブランドの信頼資産を積み上げる投資として捉えるべきだ。

6.2025年注目プラットフォーム比較

以下に主要越境ECプラットフォームの特徴を整理する。

天猫国際 市場シェア最大
審査・コスト高め
ブランド認知向け
抖音電商 ライブ配信起点
急成長中
コンテンツ重視
小紅書 女性・美容強い
口コミ文化
種草・発見型

天猫国際は市場シェアが最大で信頼性も高いが、初期コストと審査ハードルが高い。抖音電商はライブコマースとの親和性が高く、若年層へのリーチに優れる。小紅書は美容・ライフスタイル系ブランドの「発見」に強く、KOC起点の口コミ拡散が期待できる。自社の商品特性・ターゲット層・予算に応じて、複数プラットフォームを組み合わせることが2025年の基本戦略となる。